ビール原料の三大要素は麦芽・ホップ・酵母と言われますが、麦芽、ホップと書いてきましたが、ついに酵母の出番です。この酵母が最も面白いと云うか不思議な存在と云えます。
ビールを愛するロマンチスト醸造家は、酵母は地球誕生の38億年前から地球上に存在したと公言しているのですが、何故かと云えば無酸素でも生存出来るからです。
酵母は有酸素状態では増殖し、無酸素状態では醗酵活動をします。分かりにくい方は、パン造りを思い出して下さい。パンもビールもサッカロミセス属の酵母ですが、有酸素状態のパン造りでは酵母はひたすら増殖してパンを膨らませますが、アルコールは発生しません。
ビール造りの時は無酸素状態なので、酵母は発酵活動を開始します。麦芽を粉砕して造られた麦汁に酵母を加えるとブドウ糖2個からなる麦芽糖を摂取し、アルコールと炭酸を代謝します。このことが、同じ酵母なのにパンはアルコールが発生せず、ビールはアルコールが発生するメカニズムです。
では、同じ酵母の発酵活動で造られる日本酒、ワインには炭酸ガスが含まれていないのに、何故ビールには含まれているかは、自然の神秘ではなく、ハードの違いというガッカリする回答で、製造設備の違いからです。日本酒、ワインの発酵タンクには蓋がないので炭酸ガスは大気中に放出されますが、ビールの発酵タンクには蓋があるので、炭酸ガスは炭酸溶液となりビール液中に溶け込むからです。
次回も酵母です。