■目次
- クラフトビール市場の現状と展望
- クラフトビール人気の背景
- 市場でのクラフトビールの位置づけと将来性
- クラフトビールは儲からないのか?
- 実は利益率の高いクラフトビール事業
- クラフトビールが失敗する理由
- 成功するクラフトビール開業とは
- 開業前に知っておくべきこと
- 開業資金の現実的な見積もり
- 必要な免許申請
- 開業に向けた準備のステップ
- クラフトビール事業の収益モデル
- 主な収益源とその構造
- 利益を最大化する戦略
- まとめ: クラフトビール開業は儲からないのか?
- クラフトビール開業で失敗しないために
- これから起業する人へのアドバイス
クラフトビールの開業は「儲からない」って本当でしょうか?
この記事では、クラフトビール工場立ち上げの専門家が、実際のクラフトビール開業の実態について、本当に儲からないのか?を、解説します。
【この記事を書いた人】
アウグスビール株式会社
取締役COO 村井 庸介
店舗併設型クラフトビール工場の立ち上げ支援を行う。 1985年生まれ。慶應義塾大学を卒業して野村総合研究所に入社。 独立後、老舗クラフトビールのアウグスビールの坂本社長と出会い、クラフトビール造りにほれ込み株主となる。
1. クラフトビール市場の現状と展望
クラフトビール人気の背景
クラフトビールの人気は、消費者の間で味わい深く個性的なビールを求める傾向が高まっていることから更に加速しています。
伝統的な大手ビールブランドに対し、多様な味わい、香り、フレッシュ感、特別感などから、クラフトビールは特に若年層を中心に注目を集めています。
この動きは、ビール消費の多様化というグローバルトレンドの一部であり、地元で生産される地ビールへの関心の高まりとも連動しています。
また、SNSを通じた情報共有が消費者間での認知拡大に大きく貢献しており、特定のビールやブルワリーのファンコミュニティが形成されるケースも増えているようです。
市場でのクラフトビールの位置づけと将来性
クラフトビール市場は、既存のビール市場に新たな風を吹き込む存在として位置づけられています。
市場調査によると、クラフトビールの市場規模は年々拡大を続けており、その需要は増加傾向にあります。
2023年末の時点で800箇所以上のマイクロブルワリーが存在しています。
将来性については、クラフトビール市場はまだ発展途上であり、特に日本ではまだまだ伸びしろが大きいと考えられています。
アメリカではクラフトビールの売り上げシェアは25%ほどありますが、日本ではまだ1%程度です。 アメリカほどのシェアにならなくとも、まだ伸びしろがあることがわかるでしょう。
地域産業としてのクラフトビール醸造も注目されており、都市部だけでなく地方でもクラフトビール浸透し、今後の市場拡大に寄与すると期待されています。
2. クラフトビールは儲からないのか?
実は利益率の高いクラフトビール事業
クラフトビール事業は、実は利益率が高い事業と言えます。
大手ビールメーカーのビールは、350mlで200~300円程度ですが、マイクロブルワリーで作られたビールは同じサイズで350〜500円程度と、単価が高い傾向にあります。
これは、製造量が少なく手作業も多いことから発生するものですが、「ここでしか飲めない」「少量しか作れない」「手作りである」といった特別感から、高単価の商品が作れるのもクラフトビールのポイントでしょう。
また、原価率も一般的な飲食店よりも低い傾向にあります。
一般的な飲食店の原価率が35%程度であるのに対し、マイクロブルワリーを併設した飲食店の原価率は20%程度と原価率が低く、利益率の高い事業体と言えるでしょう。
クラフトビールが失敗する理由
クラフトビール事業は実は利益率が高く、儲かりやすい事業と言えるかもしれませんが、市場における激しい競争の中、消費者の嗜好にマッチしなければいけません。
新規ブルワリーは、差別化された独自のクラフトビールを提供しなければなりません。
さらに、製造設備や原材料の高コスト、厳しい規制と許可の取得過程、そして流通チャネルの確保に関する課題もあります。
これらの失敗するポイントを知らずに開業してしまうと「儲からない」というリスクが発生してしまいます。
成功するクラフトビール開業とは
成功するクラフトビール開業の鍵は、差別化やブランド構築、利益率の高さにあります。
市場における独自のポジショニングを確立し、品質と個性を兼ね備えた利益率の高いクラフトビールを提供することが必要不可欠です。
成功事例では、地域社会との強いつながりを築き、お客様との直接的な関係の構築に注力したり、高単価のクラフトビールを販売しています。
さらに、持続可能性や環境への配慮などをビジネスモデルに取り入れることもこれからの事業に必要なポイントかもしれません。
3. 開業前に知っておくべきこと
開業資金の現実的な見積もり
クラフトビールブルワリーの開業には、設備投資、原材料購入、免許申請費用、土地の賃貸や購入など、多岐にわたる初期投資が必要です。
現実的な見積もりを行うためには、これらのコストを細かく分析し、予期せぬ出費にも対応できるよう余裕を持った計画を立てることが重要です。 また、運転資金も考慮に入れ、最初の数ヶ月間の経営が安定するまでの資金計画を準備する必要があります。
知識のない初心者では、現実的な見積もりを行うことが難しくなるため、業界のベテランや専門家からのアドバイスを求めることも有効です。
必要な免許申請
日本でクラフトビールブルワリーを運営するには、免許が必要となります。
これにはアルコール製造免許や営業許可証、場合によっては食品衛生管理者の資格などが含まれます。
申請プロセスには時間がかかることもあるため、開業計画の初期段階でこれらのプロセスを開始することが大切です。
正しい情報を得るためには、地元の税務署や専門家に相談することが重要でしょう。
開業に向けた準備のステップ
開業に向けては、市場調査、ビジネスプランの作成、資金調達、ロケーションの選定、設備の購入・設置、スタッフの採用・訓練、マーケティング戦略の立案など、計画的に進めるべき多数のステップがあります。
特に、ターゲット市場を理解し、差別化された製品を提供するための戦略を明確にすることが成功のカギを握るでしょう。
また、地域コミュニティとの関係構築やSNSを活用したプロモーションも、ブランド認知の向上に寄与します。
事前に競合分析を行い、自ブランドの強みを活かせるような準備をしていきましょう。
4. クラフトビール事業の収益モデル
主な収益源とその構造
クラフトビール事業の収益源はいくつかありますが、主に以下のようなものがあります:
- 製品販売:
直接お客様に販売する小売りや、レストランやバーへの卸売り。 - タップルームやバー運営:
自社で製造したビールを、自社運営の施設で提供。 - イベントやツアー:
ブルワリー見学ツアーやビールに関するイベントを開催し、参加費や関連商品の販売から収益を得る。
クラフトビール起業と言っても、収益源は複数設けられます。
自社工場で直接提供したり、販売する場合、輸送費がゼロのため、利益率が高くなるのが特徴です。
利益を最大化する戦略
収益モデルを成功させるためには、以下の戦略が有効でしょう。
- 差別化されたクラフトビールの提供:
品質、味、パッケージングにおいて独自性を持たせることで、競合他社との差別化を図ります。 その地域でしか味わえないビールや、「ここでしか飲めない」という希少性が重要です。 - 効果的なブランド構築:
ストーリーテリングやSNSを活用したブランドの認知度向上が大事です。 - 販売チャネルの多様化:
直販、卸売、オンライン販売など、複数のチャネルを通じて製品を提供します。 - コスト管理:
原材料の仕入れコスト削減、生産効率の向上などにより、コストを管理しましょう。 - 体験価値の向上:
タップルームやイベントを通じて顧客との接点を増やし、リピーターを増やすのも良い戦略です。
5. まとめ: クラフトビール開業は儲からないのか?
クラフトビール開業で失敗しないために
クラフトビール開業は儲からないということはありません。 しかし、成功には慎重な計画と戦略が必要です。
失敗を避けるために、スムーズに免許申請を行い、余計なコストや時間をかからないようにしたり、市場調査や地域の特性を調査し、ターゲット市場を明確に定義したりすることが重要です。
また、品質の高いクラフトビールを一貫して提供し、差別化されたブランドイメージを構築することが、競争の激しい市場で生き残るための鍵となります。
財務計画をしっかりと立て、開業資金だけでなく、初期段階での運転資金の確保も忘れてはなりません。
これから起業する人へのアドバイス
クラフトビール業界での起業を目指すなら、情熱だけでなく、事業としての現実を直視することが不可欠です。
成功するためには以下のアドバイスを心に留めておきましょう!
- 綿密なビジネスプラン:
事業計画を詳細に練り、リスク評価を行い、目標を明確に設定しましょう。 - 知識と経験の獲得:
醸造技術だけでなく、ビジネス管理に関する知識も身につけることが大切です。初心者の方は専門家にアドバイスをもらうことも重要です。 - 顧客第一:
最終的には、顧客があなたのビールを愛してくれなければ事業は成り立ちません。顧客のフィードバックを真摯に受け止め、常に品質向上に努めましょう。
クラフトビール開業は、適切な準備と情熱があれば成功の可能性が大いにある事業です。
この分野での起業を考えている方々が、自らの夢を実現し、持続可能な事業を築き上げるための参考になれば幸いです。
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